周囲130キロからなる屋久島を、私たちは自転車で時計回りすることにしました。時計回りを決めた理由は、日本の道路走行事情が、スイスと違って左側であることから、時計回りすることで常に海辺側をサイクリングできることでした。最初の4分の1周ほどは、海の他に、別の地でも目にするような町並みや交通網など、見慣れた風景でしたが、先に進むごとに、周りの景色はどんどんと、ワイルド感が濃くなり、行き交う車などの姿も見えなくなり、まるで私たちだけの専用道路を走っているかのようでした。途中立ち寄った喫茶店で、海に直結した温泉があるという情報を入手しましたので、屋久島で4日間ゆっくり滞在計画した私たちは、迷いなく、その温泉を訪れることにしました。温泉は実にワイルドで、海の手前の岩場に湧き出ているものでした。自転車を停めると、服を脱ぎ、温泉に直行できるという豪快さです。目の前に広がる海を一望しながら、心地よい温かさの温泉に浸かれるなんて、なんて贅沢なことでしょう!温泉を十分に楽しんだ後は、近くの岩場で、お弁当タイムとなりました。温泉+美味しい食事は、最高の組み合わせです。

屋久島の公式サイトで、私たちにとって、サイクリングパラダイスと思えるルートを見つけました。午後に差し掛かった時間帯、道路には行き交う車も人影もなく、私たちだけでした。道は登り坂でけっこうタフでしたが、生い茂った木々に囲まれた道からでも海が望め、私たちはとことん海の景色の歓迎を受けました。蛇行した道路の先には、何かしらの驚きがありました。屋久島には天然の猿が生息することを知っていましたので、自転車を走らせながらも、木々の間に猿がいないかと、猿探しを始めました。しばらくすると、その「猿探し」が無用であったことを思い知らされました。猿は木々の間…どころでなく、行先の道のど真ん中に、姿を現したのです。私たちの登場に、なんの驚きも興味も示さず、猿たちはまるで我が物顔で、その場に居座っていました。”よそ者”の私たちは、彼らの邪魔にならないよう自転車を走らせました。なんて滑稽な光景だったことでしょう。最初の猿を目にした時は、写真に収めるのに夢中でしたが、その後の見飽きる程の猿の数に、写真を撮る手はすっかり引いてしまいました。
これまで、スイス国内を含め、様々な国や地域を自転車で巡った私たちですが、屋久島は、私たちにとって、ナンバーワンと言えるサイクリングパラダイスでした。ヨーロッパから日本に自転車を持ち込むのは、労力を要すことですが、サイクリング好きな人には、オススメしたいサイクリングスポットが溢れた島です。労力に値する楽しみが、きっと得られるはずです!(自転車は、屋久島でもレンタル可能です)